1.「1984」
この曲はまさに、今歌うのが恥ずかしいから
アイゴンに“歌ってくれ”って頼んだ曲なんです

●まさか、このタイトルもヴァン・ヘイレンの『1984』(83年作品)からですか?
會田
「ヴァン・ヘイレンって『1984』で出してましたっけ?」
高桑「あ、そっか。そう言えばそうだ(笑)」
會田「ヴァン・ヘイレンもそうかもしれないけど、“1984年”ってそういう意味でレトロフューチャー(懐古的未来。昔に誰もが思い描いていた未来図やビジョン)的なイメージがあったりして。別にそこにインスパイアされたわけじゃないんですけど、昔の人が見た2000年とか、そういう未来っていう意味で“1984年”って昔からすごく希望的だったみたいで。でも僕としては、どっちかと言うと振り返って見る“1984年”のほうが多くて、その頃ちょうどスポンジのように洋楽を吸収していたなぁって思って。歌詞に“1984”とは出てきませんけど、何となくイメージ的な感じで。前作『HONESTY』にも『1999』っていう曲があったりしたので、そういう年号シリーズです(笑)」
高桑「年号シリーズか(笑)」
●じゃあ、今後も年号シリーズは続くわけですね?
會田
「3枚目は、どんなのが入るかわからないですけど(笑)」
高桑「B.C.(西暦紀元前)とか(笑)。でもこの曲は、まさに今歌うのが恥ずかしいからアイゴンに“歌ってくれ”って頼んだ曲なんですよね」
會田「その恥ずかし返しじゃないですけど(笑)、僕は基本的にプロデューサーのときもバンドのときも、ギターソロってあまり弾かないんですよ。でも、圭くんに“ギターソロを弾いてくれ”って言われて、今回はギターソロをたくさん弾いてます」
高桑「今回のアルバムは、僕の中でギターソロがテーマになっていたので、“とにかくギターソロをたくさん弾いてくれ”ってアイゴンにお願いしましたね」
會田「黙ってたら、こういう感じのソロとか絶対に弾かないから。でも圭くんは“イイ、イイ!”って言ってくれて(笑)」
●“これぞ王道!”的な感じがいいですね。
高桑
「ギター少年がコピーしたくなるようなソロが大好きなんですよ、僕(笑)」
會田「でも、圭くんと俺とかがギター少年と呼んでいた時代から比べると、今のギター少年たちはどういう曲をコピーするのかな…」
高桑「あ、そうか。いや、その話はナシね(笑)。っていうよりも、いわゆるロックレジェンド感のあるソロがすごく好きだから。夢があるっていうか、その感じをオネスティで表現したいと思っていたので」
●全体的にギターのフレーズが、すごく印象的ですよね。残るっていうか。
高桑
「狙い通り。まんまと落とし穴にハマッてくれた(笑)。でも嬉しいですね、そう言ってもらえると」

2.「TRUE 80%」
ずらっと曲が並んでいる中で、とにかく
一番最初に歌詞を書きたいなって思った曲

●一転してアコースティックなイントロが印象的ですね。
高桑
「この曲もわりと古い曲なんですけど、作った当時は自分の中であまりにもたわいもない曲だったのでボツにしたんですけど、久しぶりに聴き返してみたら“いいなぁ”って思って(笑)。で、アイゴンに聴かせてみたら“やりたい”って言ってくれたので」
●コーラスにCHARAさんが参加してますよね。
高桑
「この曲をやるときに、アイゴンと“CHARAにコーラスをやってほしいね”って話をしてて。で、この曲もわりと早く歌詞が完成したんだよね?」
會田「うん。ずらっと曲が並んでいる中で、とにかく一番最初に歌詞を書きたいなって思った曲で」
高桑「このギターソロも、すごくイイですよ」
會田「家でレコーディングをしている利点というか、大きなスタジオを使わないでホームレコーディングをしているので、思いついたらパッとできちゃうのがいいですよね。ギターもほとんど圭くん家の壁に掛けてあるギターだし(笑)」
高桑「“これでいいか”って、手の届く範囲で選ぶ感じ(笑)」
會田「プライベートスタジオで作業しているので、こだわりの機材がたくさんありそうなんだけど実はそんなことなくて、僕と圭くんの前にマイクを立てて、マイクスタンドの位置を変えずにマイクの向きだけ変えて録音するっていう(笑)」
高桑「ほとんどマイク1本で録っちゃう感じだよね(笑)」
會田「でも、逆にそのスピード感がいいんだと思うんですよ。エンジニアもいなくてダイレクトにやれて。もうちょいトレブリーにって思えば10円玉で弾いてみたり。その場で浮かんだアイディアが、その場でサッとできる感じだな」
●ギターは家に何本ぐらいあるんですか?
高桑
「その部屋にあるのは5〜6本なんですけど、もちろんアイゴンのギターもあるし、僕もほかに何本か持っているので、合わせたら結構な数ですね」
●じゃあほんと、それだけでレコーディングできちゃう感じですね?
會田
「本当にそうなんですけど、ギターケースから出すのが面倒くさかったりして(笑)。面倒くさいというか、機材にこだわるよりも“こんな光景が入ったらいいな”って思った瞬間にすぐ録り始められるスピード感を大事にしているので」
高桑「こだわってないわけじゃないんだけど、こだわるポイントが違うっていうか(笑)」

3.「Rock'n Roll」
サビに“ロックンロール”って持ってきた
時点で、この曲はもう成功したなって(笑)

●この曲は、懐かしいというか牧歌的という印象があったんですけど。
會田
「曲の雰囲気で、サビで“Rock'n Roll”って本気で歌うのって、すごくいいかなって思って。圭くんのデモを聴いたとき、サビの部分で“Rock'n Roll”って歌っているような気がしたので、曲のタイトルも『Rock'n Roll』で進めて(笑)。でも、ロックンロールだからと言ってハードなギターでは全然なくて、わりと落ち着いた感じで」
●この曲も、ギターのフレーズが利いてますよね。
會田
「そうですね。圭くんが“それもう1回やって、これも良かったよ”ってけっこうちりばめてくれたので」
高桑「フレーズ指定の部分は、ところどころあったけどね。僕はわりとリフものが好きなので、“ここのリフだけこういう感じで弾いて。あとは自由にお願いします”って感じ。ミックスも全部自分たちでやってるんだけど、この曲に関してはギターを前面に出したかったら、ギターのレベルを上げるだけっていうシンプルなミックスにして。歌声に絡んでくるリフのレベルを上げるだけというシンプルなミックスで、聴かせたいところだけを上げるっていうか」
●でも全然出すぎてなくて。
高桑
「うん」
會田「“Rock'n Roll〜”ってタイトルはよくあるけど、“Rock'n Roll”だけっていうのはあまりないかも」
高桑「意外とないよね。だから、サビに“Rock'n Roll”って持ってきた時点で、この曲はもう成功したなって(笑)」

4.「Gangster of Dub」
コードを変えるだけでこんなにも聴こえ方が違う。
そういう通をも唸らせる1曲です(笑)

高桑「この曲はベースだけ漠然とあったんですけど、アイゴンと一緒にやるってことでちょっとダブ感を出したというか。わりと僕はザ・クラッシュとか好きで、ザ・クラッシュのギタリスト、ミック・ジョーンズが後にBAD(ビッグ・オーディオ・ダイナマイト)ってバンドを組むんですけど、それがパンクっていうカテゴライズに捕らわれないで挑戦的なことをやっているバンドで。なんか、そういう精神が注ぎ込めたらなって。で、ベースにアイゴンのギターがおもしろい感じで絡んでくれたので、それでこの曲のキャラが決まったって感じですね」
會田「これは、ザ・スペシャルズの『ルーディーたちへのメッセージ』(79年アルバム『スペシャルズ』収録)っていう曲のカヴァーで、その曲のホーンセクションのフレーズを取り入れてるんですけど、コードを変えるだけでこんなにも聴こえ方が違うというか。そういう通をも唸らせる1曲です(笑)」
高桑「そこに気付く人と気付かない人がいると思うんですよ(笑)。でもこの間テレビを観ていたら、このフレーズが某バラエティー番組にも使われてたよ(笑)」
●効果音的なギターサウンドも特徴ありますね。
高桑
「これは、レスポール レコーディング(71〜80年生産)ですね。レスポール カスタムのルッキングなんだけど、スイッチ類がたくさん付いてるギターで。アイゴンはスイッチ類の多いギターが好きなんだよね?」
會田「スイッチが1個でも多く付いているギターが好きです(笑)」
高桑「だけど、これが名前だけあってけっこうおもしろいギターなんですよ。いろいろな音が出せて」
會田「もともとローインピーダンスギター※多くのギターはハイインピーダンスで、アンプじゃなくてラインに通して使うギターなんですけど、これはアンプから音が出せるように改造してあって。ES-345などに搭載されているバリトーンスイッチ(音域調節の可能なスイッチ)に近い感覚で、ローをカットすればストラトっぽい音も出せるんです。音もすごく個性的でいいですね」
●この高音はフェンダー系かなって思ったんですけど、レスポールだったんですね。
會田
「そうなんですよ。実は僕、フェンダー系のギターってほとんど持ってないんです」
●フェンダー系のギターを弾いてそうなイメージですけど。
高桑
「そうですよね」
會田「一時期ライヴで、ジャガーとかジャズマスターを持っているバンドを見ると、“あぁ、こういうバンドか”って思っちゃう自分がいて。で、自分もわりとそういう音楽が好きで聴いてるのもあって、どうせならフェンダーを使わない宣言しちゃおうかなって(笑)。僕、そういうの好きなんですよね。誰に注目されているわけじゃないのに“俺はもうワウを使わない”とか。ワウは30台ぐらい持ってるんですけど(笑)」

5.「What can I do?」
夕方から夜にかけてのイメージだったので、
やっぱフェイザーかなって思って(笑)

高桑「ギターはダンエレクトロを使ってます。シングルコイルっぽい音を出したかったので、たまたまそばに置いてあったダンエレクトロを使ったっていう(笑)。これはアイゴンのギターなんですけど、この曲が10円玉で弾いてる曲じゃない?」
會田「あぁ、そうかもしれない」
●どうして10円玉で?
會田
「以前から10円玉で弾くことはあって、なんかベックがそうみたいなんですよね。彼はインディーズレーベルから何作かリリースしていて、その中でも『ワン・フット・イン・ザ・グレイヴ』(96年作品)っていうアルバムが大好きで。それはアコースティックサウンドが中心で、チューニングも変えているのもあると思うんだけど、ザクザクしててドヨーンとした音色がカッコイイなって。で、僕もそれをやってみようって思ってEL-MALOの頃からよくやってました」
高桑「ブライン・メイ(クイーン)もコインで弾いてるしね」
●ピックがない場合によくコインを使ったりしますけど、どうして10円玉なんですかね? 1or5円玉だって100円玉だってあるのに。
高桑
「なんか、100円玉で弾く気はしないっすよね」
●淵にあるギザギザが嫌なんですかね。
高桑
「そうかもしれないね。しかも、10円玉のほうが若干大きいですし」
●アンプやエフェクターは何を使っているんですか?
會田
「基本的に、アンプは1台も使ってないんですよ」
高桑「全部ライン6のPOD PRO。家で作業しているのもあって、あんまり大音量じゃできないので」
會田「細かい音質設定とかやれば、いろいろあるじゃないですか。でも基本的にライン6でも、大体5か10っていう感じのセッティングで。チャッチャッて感じ。そこからギターをセレクトしたり。『Gangster of Dub』では、足下にアナログのディレイを置いたりとかしたりしたんですけど、まぁそこはけっこうノリで。でも、この曲は夕方から夜に入ったイメージだったので、やっぱフェイザーかなって思って(笑)」
高桑「夕方から夜にかけてはフェイザーなんだ(笑)」
會田「昼間はフランジャーだよ(笑)」

6.「Tokyo Girl」
かわいらしいというか、王道的なコーラスが欲しかったので
BONNIE PINKさんだったら絶対にハマるだろうって

●この曲はBONNIE PINKさんがコーラス参加していますね?
高桑
「そうですね。今回は、ゲストコーラスという贅沢な使い方ばっかりしてて。なんか参加してもらった人に申し訳ないという感じで(笑)」
●彼女にコーラスをお願いした理由は?
高桑
「僕とアイゴンは最近、BONNIE PINKさんと一緒にライヴをさせてもらうことが多くて、『HEDWIG AND THE ANGRYINCH』という映画のサントラのトリビュート盤のときに初めてお会いして。その作品には、オネスティ名義でも1曲参加しているんですけど、BONNIE PINKさんが参加した曲のオケを僕らが作ったんです。で、彼女って幅広い歌声を持っているというか、かわいい声も出せればちょっと低いダーティな声も出せるっていうのが、僕の中ですごい発見で。で、この曲ではかわいらしいというか、いわゆる王道的な女性コーラスがほしかったので、BONNIE PINKさんだったら絶対にハマるだろうって。それでお願いしたんですよ」
●さらに、歌詞が谷中 敦さん(東京スカパラダイスオーケストラ)で。
會田
「それも本当に思いつきで、谷中さんって“携帯詩人”って呼ばれているぐらいで、周りのみんなに詩を送っているんですよ。大体、朝方なんですけど(笑)。その詩にはフランス文学みたいな詩が多いんだけど、たまにすごくかわいい詩を送ってくることがあって。僕はそれがすごく好きだったので、“谷中さんの男の子っぽい歌詞で行きたい”って彼にリクエストしたんです。圭くんの中学校の先輩っていうのもあって…」
高桑「それはあんま関係ないだろ(笑)!」
會田「まぁ、よく谷中さんとは飲み屋で会ったりするし、なんか絡んでみたいなっていう気持ちはあったんですよね。ちなみに、最後のギターソロはイエスの『ロンリー・ハート』(83年作品)な気分で(笑)」
●ギターソロの途中、サウンドが変わりますよね?
高桑
「掛け合いっぽくしたくて。でも実は全部アイゴンが弾いているっていう(笑)」
●ギターに関して、高桑さんも意見を言うんですか?
會田
「家で作業している感覚で、“ココ、こうしてみない?”って言い合ったり。で、“曲の最後にギターソロ入れたら?”って言われたので、じゃあイエスみたいにピッチシフターがかかっている感じにしよう、と(笑)。冗談や思いつきで言ったことがわりと採用されて、終わってみるとその冗談っぽくやったところが意外に良かったり」
●その環境がなければ、当然この作品も完成しなかったってことですよね。
高桑
「そうですね。ちゃんとギターも手の届く範囲に置いてあるし(笑)、冗談で言ったことを具現化できる環境にはしてあるから。だから逆に、プロフェッショナルなスタジオよりも気が利いている部屋っていうか(笑)。スタジオだと、アイディアが浮かんでもスタジオに行くまでに時間が経過しちゃうじゃないですか。そうするとモチベーションも下がってきちゃうっていうか。思いついた瞬間にすぐ行動できるっていう差は大きいですね。スタジオでいろんな機材を使って大勢で作業する良さはもちろんわかってるけど、オネスティはその対局にあるものを追求しているから」

7.「GET AWAY」
『アンダー・ザ・ブリッジ』を聴きながら、
ロサンゼルスのハイウェイを走り抜ける感じ

會田「これはデモの段階から…違うかもしれないけど、僕はレッチリの雰囲気を感じてて。すごくトランペットのフレーズが印象的だったんですよ、圭くんが吹いてるわけじゃないんですけど(笑)。僕なんかはレッチリを途中で聴かなくなっちゃったクチなんですけど、だからと言ってレッチリみたいにっていうわけじゃなくて、何と言うか『アンダー・ザ・ブリッジ』(91年アルバム『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』収録)を聴きながらロサンゼルスのハイウェイを走り抜ける感じ。まぁ、大人なんでそういうことも言ってみようかなと(笑)」
●歌詞も思いつきで書いていく感じなんですか?
會田
「ちょっとは悩みますけど、実際一晩に3曲とか書くし。締切が迫っていたということで、それが一番の原因なんですけど(笑)」
高桑「原因っていうか理由(笑)」
會田「“よ〜し、今晩中に3曲書いちゃおう!”って。でも、圭くんから渡されたデモテープの仮歌の段階で、何となく歌詞が乗って見えるというか、聴こえる気がするんですよね」
高桑「デモテープではいつも、英語でも日本語でもないメチャクチャ語で歌っているんですよ。でもアイゴンは、その語感に近い日本語を見つけてくるが天才的で、日本語を見つけるだけなら誰にでもできると思うんだけど、さらにそれをちゃんと1曲の歌詞にできるのはスゴイなって思うよ」
●それはスゴイですね。
會田
「いやいや、でも実はラクチンなんですよ」
高桑「だから、アイゴンが書いた歌詞を聴いた後に、僕のデモテープを聴くと笑いますけどね。“こう来たか”みたいな感じ(笑)。なんか、すごいなって感心するんだよね」
●2人空耳アワーみたいな(笑)。
高桑
「そうそう。ちゃんとつじつまも合ってるし(笑)」

8.「Via Brazil」
ボサノヴァとか癒し系の音楽ではなく、
70年代ぐらいのブラジルの実験的な雰囲気

●タイトル通り、ブラジリアンテイストに溢れた楽曲ですね。
會田
「これも、タイトルが付いてから曲の雰囲気が決まった感じで、“ヴィアブラジル”だと“ブラジル経由”って意味なんですけど、完全なる“ブラジル”じゃなくて“経由”ってところが逆に良いかなと(笑)。ブラジルと言っても、ボサノヴァとか癒し系の音楽ではなく、70年代ぐらいのブラジルの実験的な雰囲気が好きなので、そのへんを意識しました」
高桑「曲を作る時点で、“自分が勝手にイメージするブラジル”っていう漠然としたテーマだったから(笑)。決して本格的なブラジル音楽ではないので、ブラジル音楽好きの人が聴いたら“なんだよコレ?”って思うかもしれないけど、別に“なんだよコレ?”でもいいやっていうか(笑)。そういう部分で本物志向でもなんでもないから、2人がイメージするブラジルっていうものを形にしてみた感じですね」
會田「ギターソロはすごく短いんですけど、その短さが逆にグーかな(笑)。これは、圭くん家の壁に掛けてあった白いクラシックギターを使っていて」
高桑「リサイクルショップで2,000円で購入したギターで、いつもはインテリアとして飾ってあるんですけど、“これでギターソロ1発お願いします!”って言って。画的にけっこうおもしろいから(笑)」
●白のクラシックギターって珍しいですね。
高桑
「MONTANOっていう国産メーカーで、たぶん70年代のものだと思うんですけど、僕そのMONTANOのギターを2本も持ってるんですよ(笑)」
●聞いたことのないメーカーですね。
高桑
「誰に聞いても“知らない”って言われるんですけど(笑)、でもこれが2本ともけっこう乾いた良い音がするんですよ。1本がこの白いクラシックギターで、もう1本はアコギなんですけど」
●なんか、特徴的なギターばかり持ってますよね(笑)。ギターの購入は基本的に楽器店なのですか?
高桑
「楽器店で買うことのほうが多いんだけど、珍しいギターだったり低価格のギターはオークションで買ったりもしますね。そう言えばこの間、アイゴンがオークションで大きな買い物をしてましたけど」
會田「グレッチのラリー(67〜69年生産)を買ったんですけど、このギターは販売していた期間が短いからグレッチの中でもレアみたいで。ラリーには黄色と緑があるんですけど、圭くんは黄色を持ってて。以前、緑のラリーを楽器店で見かけたときから“欲しいな”って思っていて、それで今回買ったんです。でも僕は基本的にギターは見た目だから」
高桑「音は後から付いてくるっていう(笑)。僕もそういう発想なんですけど」
會田「オークションで1万円のギターがあったら、ウシャシャ言いながら買ったり(笑)。“こんなにスイッチが付いて1万円かよ!”みたいな」
高桑「別に、スイッチの数で値段が決まるわけじゃないけどね(笑)」
●使っている機材や曲もそうですけど、発想が独特ですごく楽しいですよね。
會田
「冗談とか思いつきって言うと、すごく軽い感じがして恐れるところなんだけど、僕らは全然そういうことはなくて。冗談とか思い付きを納得できるまで作れる感じが、オネスティの良さなんだなと。ライヴの見せ方も然りだけど」
高桑「2人が面白いって思うことを、とことんやりたいというか。それが義務的じゃなくね。会話の内容は音楽好きの中学生みたいなんだけど、中学生だと不可能なことが、大人だから本当に実現できちゃうっていう感じですね(笑)」
會田「初期衝動って言うと、昔に戻ってとか原点回帰というニュアンスで捉えられがちなんだけど、そうじゃなくて普通に存在する“初期衝動”というか“音楽”みたいな。そういうとこで音楽をやれているのは、すごく面白いなって思いますね」
高桑「だから、ライヴの練習も家でやっているんですよ。2人だからスタジオに入る必要もないし。2人でヘッドホンをして、マイクスタンドを立ててギターを持って。多少周りには音が漏れてるかもしれないですけど、生の歌声しか聴こえないっていう(笑)」
會田「プライべートスタジオって言っても、実家にいる感じだからね」
高桑「親が寝静まった頃に、こっそり練習している感じ(笑)」

9.「Umm...TRANSILVANIA」
ガレージのコンピレーションにこの曲だけ入ってたら
“こいつら何なんだ!?”って思っちゃうよ(笑)

會田「圭くんからもらったデモテープの段階でアジアっぽいフレーズが入っていたので、この曲のイメージはアジアっていうか。だからと言って、決してエスニックなわけじゃなくて。GREAT3がガレージバンドっていうイメージが未だにあって、この曲もガレージのコンピレーションアルバムに収録されているような雰囲気を感じたんですよ。で、アメリカのガレージバンドが考えるアジアンテイスト、みたいな仕上がりにしたいなと。だとすると、歌詞はドラキュラかなって(笑)。“ロックンロールドラキュラ”みたいな。“ロックドラキュラ”じゃ嫌だから、そこはちょっと知的に(笑)」
高桑「“トランシルヴァニア”っていうタイトルでこの曲調は、けっこう外人にウケがいいですよね(笑)。こう、ニヤッてする感じっていうか。でも、自分たちで言うのもあれだけど、変な曲だね(笑)」
●ちなみに、曲順はどのようにして決めていったんですか?
高桑
「まぁ、普通に選んだだけなんですけどね(笑)。ただ、『Via Brazil』でブラジルを経由して『Umm...TRANSILVANIA』でトランシルバニアに行く、っていうアイディアはいいんじゃないかっていうのはありましたけど(笑)」
會田「そのために、『Umm...TRANSILVANIA』の頭を『Via Brazil』の最後に重ねてるんですよ」
高桑「ただ、そのストーリーを汲み取ってもらえるかどうかは別として(笑)。ちょっと自己満足の世界ですけど」
●そこまで汲み取ったら相当ですよね(笑)?
高桑
「あ、すみません(笑)。でも、それがわからないから“何だよ”っていうんじゃなくて、本当にそれは自己満足の世界」
●そもそも、この曲のテーマは何だったんですか?
高桑
「最初にシンセの音が入っているじゃないですか? 当初は、そのシンセの音が最初から最後まで鳴り続けている曲が作りたいと思ったんですよ(笑)。だから、内容は実はどうでも良くて、とにかくシンセが“ビヨ〜ン”って鳴っている曲を作りたいって思ったら、こんな曲になっちゃったという(笑)」
會田「別に映画のサントラじゃないし、映画をモチーフにしてもないんだけど、最後にセリフを入れたりして。本当は古いドラキュラ映画のセリフを入れたかったんだけど…」
高桑「権利関係が難しいので(笑)」
會田「でも、この曲が一番好きっていう人もいてさ」
高桑「変わってるな(笑)」
會田「やっぱりこう、ネタがドラキュラなだけに女性を虜にするっていう…」
高桑「また上手いこと言っちゃって(笑)」
會田「ネタがドラキュラなだけに…」
高桑「2回も言わなくてイイから(笑)」
會田「だけど、ロッキン・ジェリー・ビーンの絵とか似合いそうじゃないですか?」
●そうですね。
高桑
「でも、ガレージのコンピレーションアルバムにこの曲だけ入ってたら、“こいつら何なんだ!?”って思っちゃうよ(笑)。でもさ、もともとガレージって近所の友達がガレージに集まって演奏したのが始まりじゃん? だからオネスティも、部屋で演奏しているっていう意味ではガレージロックではあると思うんですよ(笑)。ガレージだから枠が狭いんだけど、すげぇ飛び出していく部分をオネスティは持ってるというか。部屋からいろんなアイディアを出してるんだけど、気持ちは世界に向いてるっていう(笑)。そういう可能性のある曲ではあると思います」

10.「I say,You said...」
1コードなんだけど、ギターをジャカジャカ弾いて
切なく歌い上げているアイゴンの画が良くて(笑)

●ヴォーカルのリバーブ感も、そういう意味でガレージっぽいですよね。
高桑
「ズームの安いリバーブを使っているんですけど、僕はこのリバーブが大好きで、歌にかけると切ない感じに聴こえるっていうか。この曲もそうなんだけど、アイゴンが高い声を出しているときの切ない雰囲気が好きで、さらにこのリバーブを使えば切なさ倍増って感じなんですよ」
●この曲はどういうイメージで?
會田
「これは、サンタモニカの海岸に沈む夕日を見ながら、って感じです(笑)」
●そういう、景色が浮かぶ曲が多いのが特徴ですよね。
會田
「うん、それはあるかもしれないですね」
高桑「僕ね、音楽って絶対に風景だと思うんですよね。だから、景色が浮かんでこないない曲は逆にイメージが全然湧かなくて。曲を作るときもそうだし、レコーディングのときも歌っているときも、自分の中に絶対に風景があるっていうか。今アイゴンが言ったみたいに、具体的すぎる場合じゃなかったりするけど(笑)。でも、あのときのあの場所のニオイとか、風のニオイとか、そういうのは絶対にある」
●シンプルなギターサウンドも、曲の雰囲気によく合ってますね。
高桑
「実は、Aメロは1コードなんですよ(笑)。1コードなんだけど、ギターをジャカジャカ弾いて切なく歌い上げているアイゴンの画が良くて(笑)。で、“I say,You said”っていう歌詞も、確かにデモテープの段階ではそう歌っていたんですよ。それをうまくアイゴンにアレンジしてもらったって感じですね」
●そのタイミングでタイトルを付けたんですか?
會田
「そうですね。もちろん後で付けたタイトルも何曲かあるんですけど、でもなんか基本的にあまり悩まなかったですね」
高桑「オネスティはやることが全部早いんですよ。悩むことがないから、あとはやることだけをとにかくやる。だから、もし俺とアイゴンがオネスティしかやっていなかったら、1年に5枚ぐらいはアルバム出せるもん(笑)」

11.「Heart」
夕方になったら家の屋上に登って、夕日を見ながら
2人でタバコ吸ってボケーっとしてる感じ(笑)

高桑「僕ね、この曲のギターソロが一番好きなんですよ。手かずは少ないんだけど、そのくせ妙に説得力があるっていうか。書道家が書く白地の多い掛け軸みたいな感じ。あんまり書き込みがないんだけど、作品としてすごく説得力があるんだよね」
會田「モテるオヤジのギターソロっていうか…」
高桑「だから、そういうこと言わないの(笑)!」
會田「これがコインで弾いている曲ですね。ジャリーンっていう独特なアタック音を得られるんですよ。あと、ヴォーカルのリバーブなんですけど、もちろん家だから物理的なところもあるんだけど、あまりシャウトして大きい声を出さないのがオネスティ全体に通じるテイストなんだと思いますね。だから、アルバム全体のアコースティックっていうイメージも、もしかするとそういうところにあるのかなって」
●そして、またいやらしいソロを弾きますよね(笑)。
會田
「普通にコピーもできるんですけど、これね、僕のレスポール レコーディングにストリングベンダー(2弦だけ半音下げできる装置。カントリーによく用いられる)が搭載されているんですけど、それを使っているんです。2弦だけ半音下げてチョーキングする感じで、カントリーっぽいフレーズができて。まぁ、ニクイ演出ですよね(笑)」
高桑「タイトルは『AMERICAN ROCK』だけど、家で作業している雰囲気は全然ロック感ないっていうか。そう言うと変だけど、あんまり“せーの”でやってないから“ガァーッ”っていうイメージにならないっていう(笑)。でも、それが逆にオネスティの良さでもあると思うから。それこそ、夕方になったら2人で家の屋上に登って、夕日を見ながらタバコを吸ってボケーっとしてる感じっていうか(笑)。そういうゆったりした感じが、すごく曲に表われてますね」
會田「“屋上で夕日を見ながら”って言うと一見かっこいいんだけど、足もとは靴下の上にゴム草履を履いてる感じ(笑)」
高桑「ちょっと靴下が足袋みたいな(笑)」
會田「そういうところがモテるオヤジの…」
高桑「いや、だからそれ関係ないっての(笑)!」
(一同爆笑)