“かっこいいバンドにはTHEが付いてんねん”って(笑)。
それでバンドがモメたとかモメなかったとか

●バンド結成までの経緯を教えてください。
上中
「大阪で出会った3人、俺と山田と中田は高校の同級生だったわけですよ」
山田「その3人が北海道の酪農学園大学に進学することになって、入学してすぐの4月に“おもしろい顔したドラムっぽい奴がおる(笑)”っていう話になって。それが久保なんですけど」
上中「最初、ウルフルズのベース、ジョン・B・チョッパーさんに似てるって言うて(笑)」
山田「ドラムなんてまったく叩いたことのない久保に、ドラムを頼もうってことに。で、スカウトしたら交渉は長引かず、無事スカウトできて」
●即決だったんですか?
山田「ん〜、1週間ぐらいかな。それでバンドが結成されました」
●じゃあドラムに関しては、まったくの初心者だったと。
山田「でもギターは弾いてたんで」
●バンド名は最初からTHEイナズマ戦隊で?
上中「いや、最初は“THE”は付いてなかったね」
山田「“THE”は結成して2年ぐらい経ってから付けたんですよ。“かっこいいバンドにはTHEが付いてんねん!”って(笑)。それでバンドがモメたとかモメなかったとか(笑)」
上中「まあ、それを歴史的に言うと“T・H・Eの乱”って言うてるんですけど(笑)」
山田「すぐオーバーにするから(笑)」
上中「それから5年間ぐらい北海道で活動していまして、卒業とともにメジャーデビューする予定やってんけど、それもうまく行かず、働きながら1年経ってようやく上京したと」

自分らの音楽が明確になりはじめたとき、
ソニーミュージックの人が“フェスティバルに出ろ”って

●デビューのきっかけは何だったんですか?
上中「メジャーデビューも偶然やねんな、これも」
山田「札幌で『スピカ』っていうオーディションラジオ番組があって…」
上中「クソオーディションや」
山田「おいっ(笑)!」
上中「まぁ、それで優勝したんですよ。というか優勝してしまったんですよ、僕たち(笑)。そのとき、審査員としてワーナーミュージック(現所属レコード会社)の人も来てたんだけど、ワーナーミュージックの人からは声が掛からず、ソニーミュージックの新人発掘の方が声を掛けてくれはって。で、その人と2年ぐらい一緒に仕事をした後、SMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)が決まって、現在のワーナーミュージックに落ち着いたと」
山田「北海道の室蘭市で“サウンドアーケード”というロックフェスティバルがあって。僕らも『応援歌』という曲が完成して、自分らの音楽が“コレだ”って明確になりはじめたときに、ソニーミュージックの人がそのフェスティバルに出ろ言うて」
上中「どうして出たかと言うとですね、交通費が往復で20,000円出ると(笑)。しかも札幌から室蘭なんて、下道で行けばたかが知れてるんですよ。だから交通 費を浮かすぞって(笑)」
●(笑)いくらぐらい浮きました?
上中「18,000円ぐらいかな」
●おぉ〜。どのくらいの規模のイベントなんですか?
山田「いや、そのときちょうど8月ぐらいで、フェスって言うから“RISING SUN ROCK FESTIVAL”を思い浮かべてたんですよ。それなのに行ったら、公園に軽トラがポツンと置いてあって“ステージはあそこです!”って(笑)」
山田「お客おらんな〜って(笑)」
上中「安室奈美惠ちゃんとかが出てきそうな、大きくて豪華なトラックちゃいますよ。何のカスタマイズもされていない正真正銘の軽トラ(笑)。その荷台にべニヤを敷いて、めっちゃ狭いけど機材全部積んで」
山田「間違いなくゲリラライヴ的なトラックではないです(笑)」
●お客さんは何人ぐらい?
上中「15人ぐらいしかおらんかったんちゃう? しかも全員、ステージから20メートルぐらい離れたところに座ってるんやけどな(笑)」
山田「日なたぼっこしてるおばあちゃんとか、学校帰りに公園でクレープを食べてる女子高生とか(笑)」
上中「地元のバンドマンが“ウォ〜!”って応援してたんやけど、やっぱりステージから20メートル先みたいな(笑)。“近くに来いよ!”っていうね」
●それで無事演奏できたんですか?

上中「5曲ぐらい演奏したけど、もうムチャクチャなんですよ。マイクは“ボカン”っていうは、ドラムなんてスネアが俺らの前に転がってきてんで、演奏中に(笑)」
山田「揺れてたからね(笑)。でもそこへ偶然、登別 温泉に行こうとしていたソニーの人が寄って、演奏してた『応援歌』を聴いて“感動した”と。で、あれよあれよと言う間に東京に行くことになり…」
上中「何が起こるかわからない。やっぱり日々頑張るもんだなっていうね」
●「応援歌」がガツンと心を揺さぶったと。
上中「もちろん。その曲を演奏しているのを見て“ヤバイ、行こう”って」
●その頃すでに「応援歌」は完成していたんですよね?
山田「はい。でも、上京して右も左もわからないときに『応援歌』を出すよりは、全国ツアーを廻って、バンドとしてもしっかりしたときに出そうっていう意志がありまして」

サウンドも歌詞も心意気も、すべて
ファーストアルバムより10倍良くするぞって

●いや〜それにしても、アッパーなロックナンバーからバラードまで、本当に幅広い楽曲が詰まったセカンドアルバムが誕生しましたね。
上中「これは“10倍計画”なんですよ。楽曲のクオリティはもちろん、サウンドも、歌詞も、心意気もすべて、“ファーストアルバムよりも10倍良くするぞ”っていう計画の元に作った作品なんです」
●それは、メンバー全員で掲げていた計画?
山田「そうですね。イナズマアルバム会議で(笑)」
上中「セカンドアルバムって何言われるかわからへんやん。何かとセカンドアルバムを基準に評価されてしまうし。“セカンドアルバムだから悩んでる?”ってよく言われるんやけど、全然悩んでへんっちゅうねん!」
山田「そういう人を納得させるためにも、本当に良い作品を作らなあかんっていうね」
上中「10倍良い作品を作って黙らせちゃえって」
●テーマも明確だから作業的にも順調に?
上中「レコーディングは本当に楽しくやらせてもらって。10倍良い作品を作るってことは、それだけシビアにならなあかん。苦しまないとええ作品もできへんから、そういう意味ではすごくストイックに作れましたね」
山田「レコーディング現場の空気は作品にいろんな影響を与えるから、その点ではもう楽しく作業できた。良かったよ、本当に」
●具体的に、どんなことがありました?
山田「ヴォーカル録りって一番最後じゃないですか。だから、(上中が)レコーディング中に馬のかぶりものを被って、馬キャラになりきるんですよ。うっとうしい(笑)」
上中「『後悔するなら反省を』っていうウエスタン調の曲があって、久保が“より気持ちを入れるために”って言って持ってきてたのよ。俺は最後までとにかくヒマだったから、それを被れば悪口を言ってもいいっていうルールにして。“トチってたのに完パケしちゃったねぇ、あとで後悔するよ〜”とか、そういうことをチクチクっとね(笑)」
山田「“お前もう帰れや!”って言ったり(笑)」
●プリプロもみっちりやって?
上中「もちろん。準備段階からシビアに、作り込めるところはすべて作り込んだからね」
●すでに完成していた曲もあったんですか?
上中「シングル曲『パーダラ・ブギ〜後悔するにゃ若すぎる〜』と『陽はまた昇る!!』以外は、すべて新曲ですね。初音源となるミニアルバム『THE イナズマ戦隊』から約2年半ぐらい経つけど、納得のいく形になるまでいろんな壁にぶつかって、起き上がって進んでまた壁にぶつかってっていう繰り返しだったけど、ようやくバンドが完成した感があるというか。“俺らはあのイスに座るべきなんや、この道を歩いていけばいいんや”っていう、明確なビジョンが見えた上でのレコーディングやったから」

ちょっとのミスも訂正するって感じでやったら、
後々聴いててやっぱり気持ち良かった

●タイトルは、ほかにも候補があったんですか? 
山田「ファーストアルバムが『勝手にロックンロール』やったから、ロック繋がりで行こうっていうのはありましたね。でもあまりいいアイディアが浮かばず、しかも続けて“ロック”を付けると、どこまでロックンロールで行けばいいのかわからなくなるから、上中が“『若者よ大志を抱け』でいいんじゃない?”って。イナズマ戦隊をうまく表現したタイトルじゃないかと」
●歌詞からも、そんなスタンスが伝わってきましたね。
上中「“イナズマ戦隊は直球勝負ですね”って言われるんやけど、確かに俺らの武器は快速球やけど、それを生かすためのシュートとカーブを覚えたっていう。松坂大輔みたいな感じでね。スライダーあってのストレートだからな。だから、それを覚えるまで約2年半かかったけど、それはドラゴンクエストで言うレベルを上げないと呪文が覚えられないみたいなもんで。底辺を上げないと見えない世界やったから、それを覚えた上で今回の歌詞も書けた。何か考えさせるスペースを与える歌詞というか」
●今回も歌詞はすべて上中さんによるものですけど、やっぱり自分が書いた歌詞じゃないと歌えないという気持ちが?
上中「歌えない! やっぱ気持ちが入らないですからね。ライヴになったら特に歌えないですよ。ほかの人が書いた歌詞っていうのは、どんな気持ちで書いたのかわからないじゃないですか。だからその分、自分の書いた詞にも嘘は書けないと思うけど」
●ステップアップを実感できたっていう感じですか?
上中「そうですね」
●ギターもまた然り。
山田「もちろん。いいギター弾いてます(笑)」
●「ロマンチックが泣いた」のイントロのギターもいいですね。
山田「そうでしょっ!?」
上中「えっ、ギター弾くの?」
●弾きますよ。
上中「イナセン、コピーしたらできる感じ?」
●えぇ、そりゃまあ…(笑)。
山田「いやいやいやっ! 言うたなオイ(笑)」
上中「おいおーい」
山田「あれ、オープンG(チューニング)ですよ」
上中「ウソつくなお前(笑)!」
山田「っていうか、どんな話してんの(笑)」
●すみません(笑)。では、曲が上がったときの手応えも良かったのでは?
上中「最高ですね。それだけシビアにやったから納得できるっていうのがある。勢いでレコーディングをして“勢いがあるからオッケー!”っていう感じだと、リリースするまでに絶対後悔するのよ。まさに後悔するなら反省で、反省したから後悔せえへんようにびっちりやる。しんどいかもしれんけど、ちょっとのミスも訂正するっていう感じでやったら、あとあと聴いててやっぱり気持ち良かったもんな」
山田「心配せんで聴けるからな」
上中「プレイする側としては、欠点探しをしてしまうからね。今回は探さんでええもん」
●前作では後悔はあったんですか?
上中「前シングル『パーダラ・ブギ〜後悔するにゃ若すぎる〜』のときに、もう自分たちが進むべき道が見えかけてたからあまりなかったけど。でも絶対あるのよ、ちょっとはあんねんで。どの段階でも、“もうちょっと”っていうのは。でも今回は激少ない」

前に比べて確実にステップアップしているから
かっこ良い、かっこ悪いの判断がきっちりできるようになった
●プロデューサーの白井良明さんによるところも大きいですか?
山田「相性が良いというか、チャキチャキしてるんでね(笑)」
上中「一緒に仕事をするのも3回目やから、お互いが何をかっこいいとするのか、わかり合ってる。自分らもシングル『陽はまた昇る!!/天路』(04年3月発売)の頃から比べて確実にステップアップしてるから、良明さんが提示してくるものに対して、かっこ良い、かっこ悪いっていう判断がきっちりできるようになったっていうのはあるよね。だから、ほんまにやりやすかった。で、僕らも“シビアにいきたい”って言ったらそうしてくれるし、ちゃんと自分らの気持ちを汲んだ上でかっこ良いものを目指してくれるから。そういうところは良明さんは最高だね」
●今回、良明さんとの仕事で発見はありました?
上中「毎回発見やね。あの人って、スイッチの切り替えがすごくうまいよな。音楽もそうやけど、人としての瞬発力っていうか、瞬間の集中力で仕事をして後は楽しむみたいな」
山田「もちろんギタリストの大先輩でもありますから、学ぶべきところはたくさんあり。たとえば、オブリガート(メインのメロディの空白部分を補佐する旋律のこと)とかあるじゃないですか。メロディを自分で考えて“こんなんどうですか?”って持って行くと、良明さんは“ここが歌メロとかぶってるからこっちにしない?”とか言ってくれて。メロディとかぶるってことはこういうことかぁ、みたいな。だから、細かいところはたくさん教えてもらっていますね。すごくいい経験してます」
●機材は何を?
山田「自分のギターと良明さんのギターと、ギターテクニシャンのかっぱさんが持ってきたおすすめアンプ、ロッカフォルテ。今までずっとマーシャルアンプを使ってたんですけど、理想とするマーシャルの音がどうしてもうまく出ないっていう話をしていて。そのロッカフォルテは見た目がマーシャルみたいなヘッドなんですけど、それをキャビに繋いで音を出してみたら、僕がイメージするマーシャルの音に近くて。良かったですね、ロシア製らしいんですけどね」
●ギターは?
山田「テレキャス、レスポール、レスポールスペシャル、SG、ES-335に、アコギはマーティン、ギブソン。レスポール以外は、すべて良明さんに借りました」
●けっこう使ってますね。
山田「けっこうね。レスポールスペシャルが今回のお気に入りで。SGも良かったですね」
●今回レスポールは、あまり使わなかったんですか?
山田「そうですね、勢い系の曲はレスポールでいいんですけど、細かいニュアンスとか泣きのメロディ系はシングルコイルのほうが泣ける感じがするんですよ」

化学反応っていうか、曲が歌になる瞬間っていうか。
あの瞬間はたまんないっすよ
●作曲は皆さんでやってますが、どのようにして曲を作っていく感じですか?
上中「それぞれ自分の気に入ったメロディをパーツパーツで持って来て、“ああでもない、こうでもない”言いながらスタジオで完成させていくパターンだね」
●いろんなフレーズを組み合わせて作ることも?
上中「あるある。このフレーズ入れたらええんちゃうって。まぁAメロ、Bメロ、サビぐらいは各人持ってくるけどね」
山田「また、メロディに歌詞が乗るとぜっんぜん変わってくるよね。化学反応って言いますか、曲が歌になる瞬間と言いますか。あの瞬間はたまんないっすよ」
●逆に、歌詞を乗せるとダメになる場合っていうのもあります?
山田「いや、今まではないっすね。“わぉっ!”っていう感じですね、毎回」
上中「4人が同じところを見て曲を作るから、同じ方向に向かっていくことは間違いない。僕もそこに歌詞を添えて、カーブ、ストレート、シュートって変化させていく感じやから」
●どんな良い曲が出来上がるかは、開けてみないとわからないと。
上中「そうそう」
●フレーズを持ってきて、一番採用される人って誰ですか?
山田「やっぱ、ヒロ(久保)と丈弥がほとんどですね。でもおもしろいのが、まぁそれぞれアイデアを持ってくるじゃないですか。で、持って来た人が普通 歌うじゃないですか。でも、“やっぱり丈弥が歌わんとわからん”っていう話になって、『丈弥弾き語り50曲シリーズ』みたいなん作って(笑)」
上中「作った作った(笑)。あれおもろかったわ」
山田「覚えるの大変、みたいな」
上中「男を唄う、みたいなね(笑)」
●全部歌ったんですか?
上中「全部歌ったよ」
山田「でも、そこで丈弥が歌ったときのニュアンスが良かったから“そのまま使っちゃえ”みたいなところもあるんですよ。たとえば『後悔するなら反省を』の間奏明けの“ガガンガンガガンガン”ってところとか。丈弥が歌ってなかったら、また違う感じにはなってたよね」
●いろいろな化学反応がありつつ、この作品ができたと。手応え120%、後悔も…。
上中「後悔するなら反省しろってね」